古武術を介護の現場に〜岡田慎一郎さんの講座に参加〜

東筑軒 かしわめし
東筑軒のかしわ弁当がパワーに^^

一週間前、とうとう念願の講座を受けられました♪

古武術を介護の現場に取り入れた岡田慎一郎氏の講座です。

とある研究会に組み込まれている情報を目にして、

SNSを使っててよかった!と思いました。

 

10日ほど前、Facebookで見つけた「第10回多業種フットケア研究会 in 小倉」。

 

 

 

 

主催は一般社団法人日本トータルフットケアマネジメント協会、共催は小倉第一病院。

岡田氏を含めて3名の講座が開かれるとのこと。

 

岡田氏の話が直接聞けるだけではなく実践もあるという告知だったので、

イベント前日に申し込んで滑り込み参加。

旧知の方もいないし、協会のことも詳しく知らなかったけど、エイヤーでした。

 

というのも、10年以上前から、岡田氏の理論と実践に注目しながら

なかなか会えず、本やDVDを見るだけでした。

 

岡田氏の師匠である甲野善紀氏が提唱する古武術については、

TVなどで知ってる人もいるだろうけど、百聞は一見にしかず。

 

やはり目の前で驚異的な動作と裏付け理論を見せつけられ、

心から来てよかったと思いました。

 

 

<< シンプル介助術の実践 >>

 

たとえば、130kgはある太い男性を小柄な岡田氏が持ち上げる動作。

横も縦も大きなその男性は心配そうだったのに、

樽を蝉があっさり抱えたようでした。

 

かと思えば、車椅子から床へ滑り落ちた介護度が高い方を

軽々と抱え上げて座らせる。

 

私が患者役で見本になったので、

いかに力を加えず移動させられたのかがわかりました。

 

3秒かからず、床から椅子へ、ふわっと座っていた。

ご本人にとっては至極自然な動きなのでしょうが、ビックリポンです。

 

関取衆のような筋力の力に頼らず、

軽業師のような身のこなしで介助する。

私は介護の仕事をしているわけではないけれど、

このような技を習得できたら、いつでも使えるではないか。

 

この日行われた3講座の合間の休憩時間に、

介護のプロが現場で苦慮されている質問に対して

岡田氏が次々と答えて実践して見せ、

取り囲んでいた参加者は一様に驚嘆していました。

 

研究会に参加していたのは、ほとんどが介護、医療、フットケア業界のプロ。

私のような門外漢は皆無じゃなかったかな。

二人一組の実践で私と組んだ方はビックリされてましたので。

 

岡田氏が現在この日のメイン受講者に話して実例を見せたのは

自著『シンプル身体介助術』でも解説している基本。

 

1)背中と腕を連動させる抱え方

2)腰を低くする(骨盤の位置)

3)重度の方には一体化する

 

そこで、身体の土台である股関節の重要性も力説されていました。

現代は、インターネットというありがたい技術のおかげで、

自宅に居ながらにして岡田氏の理論と実践を見ることができます。

 

たとえば、下記のサイトで基本のさわりを知ることも可能です。

腰を痛めず介護できる? 古武術応用した技術「準備編」(朝日新聞デジタル)

 

ご本人も話していましたが、便利な世の中になりましたよね。

自宅に居ながらにして、このような技を学べるのですから。

 

自分の身体も傷めず、無理せず、

相手の身体状況を見極め、寄り添いながら近づきすぎず、介助する。

1時間半はあっという間で、もっともっと知りたい身につけたいと思った技術でした。

 

 

<< 筋トレなんか必要ない >>

 

これを後押しするように「筋トレなんか必要ない」と語る、

他の二人の講師のお話も面白かったですよ。

岡田氏が古武術を介して知り合ったそうです。

 

ラグビーの元日本代表だった平尾剛氏は、

脱筋トレ論を唱え、「数値化できない身体知」のカンとコツの重要性を指摘し、

「子どものうちに遊びまくるよう育てて」と力説していました。

 

本人は、「昔、私は本当に筋肉を作るためにプロテインをガバガバ飲んでました」と

語るほど、現在も盲信されている筋力崇拝者だった過去を告白し、

そこからいかに偏った考え方だったのかと、

これからは筋力に頼りすぎない考え方を紹介しました。

 

感覚的に身につけた岡田氏の理屈を、平尾氏が理路整然と体系化していく感じかな。

ほんの100年前、健康的に暮らしていた市井の人々を引き合いに出したように、

教育現場を通じて真に健康な日本人を取り戻していってほしいと思いました。

 

平尾氏は現在、ミシマ社のブログページ脱筋トレ宣言を書いています。

 

 

もう一人の講師は金メダリスト小平奈緒さんを支えた一人で、

古武術をスポーツに取り入れて研究している高橋佳三氏。

 

正しい足指の動きが正しい姿勢を支えるのだから、

常識を覆し(誤った姿勢に囚われている)日常生活を変えていこうではないかと。

岡田氏が身体の土台と語った股関節の重要性について、高橋氏も説いていました。

 

時間の制約がある中、高橋氏が最後に押し込んだ話が印象に残りました。

「集中を超える集中」を追い求める。

なんだか禅問答のようですが、

人間の身体機能を十二分に生かす動きや考え方について、

岡田・平尾・高橋の三氏が日頃から実践していることなのかなと思いました。

 

本筋ではないけど、岡田氏が四六時中、

身体機能について考えているエピソードを三人三様で紹介。

学生時代に体育の通信簿は2しか取れなかった岡田氏とは違い、

ずっと5を取っていた平尾・高橋両氏。

長じて知り合った岡田氏との飲み会の後、深夜の駅までダッシュしたとき、

スポーツマンの二人を観察しながら並走した岡田氏こそ、

ものすごい身体能力の持ち主だと誰が見てもガタイのいい二人は

思い出し笑いを堪えきれない様子でした。

 

退屈するはずのない半日は、本当にあっという間でした。

お昼に配布された弁当は懐かしい折尾駅の写真が載る、

東筑軒のかしわ飯の幕の内弁当。

こんなに食べられないなと思ったのに、美味しくてぺろっといただきました。

 

 

フットケアのプロたちによる研究会なので、別室では靴下や爪切りなどの道具がコンパクトに展示即売されていました。

 

そこで休憩時間に買ったニッパーを思いの外、重宝しています。

市場価格よりも2〜3割は安かったプロ仕様の爪切りは、変形しかかった爪も綺麗に切れ、高齢者の弱りかけた爪にも優しい。

 

 

 

改めて、この研究会を小倉の地で共催してくださった小倉第一病院に大変感謝しています。

もう10年も岡田氏の講座を年10回ほど開催していらっしゃるとのこと。

なぜ気がつかなかったのか、少し残念ですが、

きっと必要になった時期だからこそ研究会の情報が目に留まったのだろうと

いい方に捉えています。

 

そんなこんなで、育ち盛りならいざ知らず、

健康長寿を呪文のように唱える現代の中高年は、

自らの身体を諦めず甘やかさず労わることが必要なんだなと思った研究会でした。