風景画の巨匠はこだわり派?〜北九州市立美術館本館・祝リニューアルオープン ターナー展〜

北九州市立美術館のリニューアルオープンを飾る「ターナー 風景の詩」。

節分までの展示なので焦っていましたが、ようやく行けました。

 

明るくなった館内はオブジェも一新され、なんだか広々感じられます。

ちょっと寒さが緩んだ当日は、煙るような冬の風景が一望できてリフレッシュできました。

実はPM2.5が基準値を超えてたらしい。

 

展覧会はというと、大海原で嵐に翻弄される帆船や

緑濃い大自然の印象が強いターナーだけど、

本展示の半分を不透明水彩で大胆かつ細密に仕上げた画が占め、

改めてドラマティックなスケール感が素晴らしいと思いました。

今まで良さがわからなかったのはなぜだろうと思います。

 

ずいぶん前ですが、透明水彩の絵画教室に通っていたこともあり、

不透明水彩ならこんな風になるのかぁとも感じました。

 

ものすごく乱暴にいえば、涼やかな重ね塗りの妙に白の絵の具を使うか否か、

が不透明と透明の違いかもしれません。

ターナーは大自然の神々しい光と影を不透明水彩で写し取ったのかと。

 

油絵の具でたっぷり描いたとばかり思っていたので、

水彩でここまで濃厚に、また細々と描き込めるものなんだなぁと

新鮮に驚きました。

 

 

たとえば、「悪魔の橋」と呼ばれた伝説の峠を雄大に切り取りながら、

今にも真っ逆さまに落ちそうな恐怖心を、

緻密に描き込んだロバや岩肌で煽るアングルの妙。

当時は写真はもちろんドローンなんてなかったわけですから。

 

 旅先でスケッチブックに描き残したものが印象的であればあるほど、

そのとき感じた想いを筆に乗せて転写するならば水彩の方が

適していたのかなと、大画面を前に思いました。

 

美しいWクリアファイル
美しいWクリアファイル

それに、昨年立て続けに観た広重や北斎など天才浮世絵師を私は思い出しましたよ。

ちょうど上階で同時開催中の当館ベスト・コレクションで確認することになりましたが。

 

また、ターナーは広重や北斎たちのように、写真がまだない時代に作品がより広く知れ渡るよう、本の挿絵や紀行紹介としての版画に取り組んだ姿勢には、若くして認められた才能とは別の画商的執念を感じました。

 

版画コーナーの説明書きに、

あぁターナーって相当煩い御仁だったんだろうなぁと

当時の共同制作者たちの苦労も思いやったりしました。

妥協を許さない仕事ぶりだったようです。

そのおかげで、彼の名声は100年後も残っているわけですがね。

 

でも、私はどちらかというとセザンヌの水彩画の方が好きかな。

抜けるような空気感と光が色の宝石のようにキラキラした軽やかさがたまらなく、

ますますまた本物を観たいなぁと思いました。

 

<リニューアルオープン記念> 

英国最大の巨匠 ターナー 風景の詩 Turner and the Poetics of Landscape 

2018年2月4日まで。

 

鑑賞の余韻に浸り、四季を感じていた空間が一変?
鑑賞の余韻に浸り、四季を感じていた空間が一変?

ところで、美術館がリニューアルということで気になる方もいらっしゃるかも。

 

ちょっと意外だったのはオブジェの置き場所でした。

中階段から裏庭を眺めるスペース半分を潰してドーン。

裏庭にも茶色い箱が据えられて展覧会の余韻を楽しむ風景を遮っていました。

上階展示室へ向かう階段から向かい側にも何やらドーン。

カブトムシか●キブリかと思ったらコレクションである現代アートの展示でした。

ドキッとしましたが、この時期だけなのかとわかったらホッとするやら可笑しいやら。

 

「丘の上の双眼鏡」なんてキャッチフレーズの当館

「ザ・ベスト・コレクション」はモネやマチスなどの巨匠がズラリ。

これらの後期展示は春休み前の3月18日まで。

 

草間彌生のカボチャが病的に並んだ棚や、

こちらの神経がまいりそうでも評価が高いとされる現代アートは

なかなか味わえるものではないでしょう。

私に現代アートは猫に小判のようです。

 

その現代アート展示最後の個室ブースに入ったら、

NHKの地元スタッフがちょうど収録中でした。

不気味な昭和的気配が漂う展示室はその日の夜、

オンエアで紹介されていましたよ。

 

 

<リニューアル・オープン記念>

ザ・ベスト・コレクション -丘の上の双眼鏡

 2018年3月18日まで。

 

寒さ厳しい折ですが、ちょっと気分転換したいときにどうぞ♪

ドーン
ドーン