『シン・ゴジラ』の引力

映画『シン・ゴジラ』公式サイト
映画『シン・ゴジラ』公式サイト

9月に入っても、快進撃が止まらない「シン・ゴジラ」。

”公開1か月で累計動員360万人、累計興行収入53億円を突破” らしい。

 

私はすでに2回、観ました。

いままでリバイバルで観に行った以外は、邦画でも洋画でも初めてです。

 

何がそんなにスゴイのか? は、他のサイトに任せ、

私が気になったことだけをメモ的に書き残しておきます。

(ネタバレします。ゴメンなさい^^)

 

(1)庵野総監督の凄腕・剛腕・辣腕っぷりがハンパない

 

これでもかってくらい緻密かつ大胆なカットをテンポよく積み重ね、

スピーディーに束ねてクライマックスへ突っ込む編集力。

 

実は、総監督自らiPhoneで撮り溜め、

他のプロカメラマンの映像とエイヤ〜でつなぎ合わせたそうです。

 

そんなことは知らずに見ましたが、

「これが新世紀のゴジラだ! 真打だ!!」と言わんばかりの迫力映像でした。

 

飽きる隙がまったくありませんでした。

 

というのも、

 

(2)速読・速聴の映画ですもん! 

 

すごいスピードで展開していくので、よそ見できない。

 

シーン展開も、役者のセリフも早い。

シーンが変わるごとにテロップがいちいち入る。

そのテロップが長すぎて、見切れる映画館もあるらしい。

おかしくて笑えません。

ひとクセあるキャストの面白さもネットを騒がせていますね。

 

そして、

 

(3)畳みかける映像の波に、押し寄せる音、音、音!

↑ここ、非常に大事。

 

音響の効果なくして映画の成功はない。

哀愁を帯びたメロディがゴジラの背びれを覆ったり、

宇宙大戦争のマーチがゴジラの上をカラフルに跳ねる。

 

クライマックスで、ほんまかいな!?という作戦を展開するとき、

高らかな金管楽器の音がスコーンと鳴り響いた爽快感。

 

この作戦がなぜかうまくいって、きっと無事にゴジラを倒せるんだという

明るい予感が、音楽とともに疾走するのです。

 

 

というような、こんな感想は世の中にごまんと転がっています。

 

でも、これらをすべて一度にしっかり味わう余裕はないのです。

細かい描写や小ネタは、2度見てもわからないほど。

 

どこに何が転がっているかわからないから、何度も見たくなるのだと思います。

 

 

しかし、本当にすごいのは、ゴジラ侵攻の映像を見て、

 

(4)2011年の3.11東日本大震災をオーバーラップさせたこと。

 

ゴジラが蒲田をのたくって突き進むと、

街も船もオモチャのように破壊されていく。

 

のっけから面白がって笑って観ていたけど、

あの映像が画面いっぱいに広がったとき、一瞬ひるみました。

 

キャッチコピー「現実(リアル)対虚構(ゴジラ)」に、気づかされたのです。

 

その後に展開される官邸の、あまりに鈍い危機対策シーン。

 

若きエリートたちの早いセリフの応酬に、

「なんとかできないのか」と、あのときと同じように拝むような気持ち。

 

ゴジラが何もかも押し潰して進んでいく姿に、

あの日を重ねた人は多かったと思います。

 

映画を見た政界人のインタビューを読めば、

どんなに綿密な取材をしていたかもわかります。

 

ゴジラの歯磨きか?と笑ってしまったアナログ作戦が、

実は核施設のリアルな作業風景の投影、

虚構にリアルを対決させたものだったとは。

 

ラストシーンで突っ立つしかなかったゴジラは、

これから日本はどうするのかという未来の課題を突きつけ、

だけど「きっと乗り越えていく」と鼓舞している。

ように見えました。

 

 

 

もちろん、キャストやゴジラの形態変化、筋立て、小道具などの

細部に施された面白さが、

いくらでも掘り起こせそうなのは大きな魅力に違いありません。

だから、何度でも見たくなるのです。

 

たとえば、上映が始まると同時にゴジラの足音がド〜ンと響き始め、

ワクワク感が湧き上がったそのとき、

「映倫」ド=ン!

 

思わず吹き出してしまいました。

 

 

私ごときが断言するのもおこがましいことですが、

第一級の娯楽大作に仕上がっていると思います。

 

そして、タイトルの「シン」に総監督が込めた思いが、

どこにあるのかに思いを馳せるのかが、

この映画の最大の見所ではないかと思います。

 

あなたは、どのシーンに心惹かれるでしょうか?

 

 

 

今年の夏は、いつにも増して、にぎやかだった。

と、夏の終わりに思います。

 

お盆にリオデジャネイロオリンピックの日本勢メダルラッシュと、SMAP解散発表が重なりました。

 

もちろん都知事選だのテロだのポケモンGOだの、これでもかといろいろありました。

 

そこに、シン・ゴジラがドドド〜ッと割って入りました。

 

モスラ〜やモスラ〜♪と歌ったザ・ピーナッツの妹さんも今春、鬼籍に入りました。

 

ゴジラ映画のどれを見たのかさえ覚えていない私でしたが、

昭和から平成へ日本の特撮を確実に進化させただろう映画を

観れてよかったと思っています。